ほんとうに、まばたきをしていたら夏が暮れたようだった。  あしたから十月になる。  駅前の花屋に並びはじめた秋の花をながめていると、「おい」と声をかけられた。  耳慣れた声に振り向くと、参考書ぽい分厚くて…

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底に飴玉

   数日しないうちに、わたしはまた三人にみつけられた。 「葵ちゃん?」と声をかけてきたのは祐樹さんだった。のどから背中にしっぷを貼りたくっていたわたしは、その日もあてどなく動いていた足を止めて、三人の顔をみあ…

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晩夏と初恋

  「三人、いたよ」 わたしはよどみなく、指を三本たてて首をかたむけた。さわがしい昼休みの教室でわたしと談笑にふけっていた水屑くんが「へぇ?」とわかってなさそうな顔でうなずき、「三人って、同時に?」と質問を重ね…

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