夏が暮れると、呼吸をくりかえしているだけでも秋は通りすぎて、あっという間に冬が訪れる。
学校はというと相変わらず何事もなく、わたしはぼんやりと毎日を過ごして勉強にはげんでいた。運動会にも学校祭にも誰も来ないのはなれっこだったので、楓お兄ちゃんが「葵の運動会っていつ?」とたずねてきたときにはもうそれらの行事が一通り終わっていて、ひどく落胆させてしまったのは反省している。学校にいるわたしの写真が撮りたかった、らしい。行事の日は保健室にいるだけなので撮るものもなにもないけれど、来年は運動会の日を伝えると約束した。楓お兄ちゃんと同じくらい、祐樹お兄ちゃんがうれしそうにうなずいていた。
冬のはじまり、わたしは睦月がおさがりでくれた厚手のカーディガンを羽織り、白い息をまるく吐きだしながら街を歩いていた。冬になるとワンピースからでている膝や手の痣が冷えて、きしむような感覚をおぼえる。あたためるとやわらぐので、とりわけ寒い日は睦月が自分用に買いだめしている使い捨てカイロを拝借する。でん、とあからさまに暖を主張するオレンジの箱をリビングに堂々と置いているのがわるい。いや、わるくはないけど。
両手でこすったカイロを自分のほっぺたにあてて歩いていると、「葵ちゃん」とうしろから声がかかった。
振り返ると、冬服のブレザーを着込んだ祐樹お兄ちゃんが、はにかみながらわたしをみおろしていた。
しゃがんでくれたのでよくみえる赤い鼻先にカイロをぎゅっと押しあてると、「なになに? あったかい」と幼子のようにはしゃいでから、祐樹お兄ちゃんはわたしの頭を撫でた。
周囲にふたりの姿はない。きょうは祐樹お兄ちゃんひとりらしい。夏の終わりから二、三日に一度顔をあわせているとは言え、毎回三人そろっているわけじゃない。そろそろほかの誰がいなくても慣れたころだったので、誰がいないから落ち込むこともない。わたしは三人のうち誰と一緒にいようと、あきれるほどに楽しく、満ち足りていた。三人がどうだったかを確かめなかったのは、こどもなりの臆病だったのだと思う。
祐樹お兄ちゃんはわたしの手をとり、慣れた道を歩きだす。瞳お兄ちゃんとはまた違ううつくしさのある顔が、灰色に霞む冬景色ににじんでいる。チューリップの匂いも淡く輪郭がとけていて、わたしは目を細める。祐樹お兄ちゃんの匂いはいつも、ひと並みよりほんのすこしだけ淡い。一度憶えれば忘れないけれど、気づかなければたやすく紛れてしまう。そうあるべくと願われているかのような。淡い、チューリップの匂い。
歩行者天国の商店街を、手を繋いで歩く。
制服姿のうつくしい少年である祐樹お兄ちゃんは、ころころと花が咲くような笑顔をわたしに向けて歩いていた。当然商店街にはわたし以外の人間も多く、祐樹お兄ちゃんは無自覚のうちに数人の視線を集めていた。あどけない花束のような笑顔。見惚れるひとは多いのだろう。わたしは特別不愉快も愉快も感じることなく、目の前のお兄ちゃんにひっそりと笑みを返す。
「期末テストやだなあ。俺ばかだから……」
「期末、テスト?」睦月もそんな話をしていた気が、とわたしは宙をみる。
「うん。二学期の終わり前にそういうおっきいテストがあってね。瞳はめちゃめちゃ出来るんだけど、俺はもう全然で。楓はやる気がないだけだけど……」
「そっか」
いつも勉強の話になると、三人の立ち位置ははっきりとわかれた。出来るにこしたことはないと言う瞳お兄ちゃん、出来なくてもまぁいいよと笑う楓お兄ちゃん、俺も出来ないからなんも言えないとうなだれる祐樹お兄ちゃん。わたしはさいわいにも勉強に苦手意識がなく、逆に運動は平均台を歩けず足が遅くドッジボールは開始直後外野になってそれきりのこどもだったので、一番気楽に叶えられる、という理由で瞳お兄ちゃんの話にうなずくことが多かった。勉強が出来ていれば受験に困らないのはよいことだ。
要さんはたいそうにばかで、睦月はそれなりに勉強が出来るけれどひとに教えるのはてんでだめで、文月さんも似たようなものだ。一回算数のテストで過去最低の点数をだして途方にくれたとき、ねばりづよく熱心に教えてくれたのは瞳お兄ちゃんだった。
「葵ちゃんは勉強得意だもんね。えらいなぁ」
「えらいの?」わたしはかたく繋いだ手をみつめながら、首をかしげる。「勉強だけ出来ても、べつに……」
「瞳みたいに二物も三物も持ってなくたっていいんだよ」
「瞳お兄ちゃんは、勉強も出来るけど、やさしいから」
「葵ちゃんだってかわいいもん」
なぜかここにいない瞳お兄ちゃんに対してむきになりながら、祐樹お兄ちゃんは歩いた。他人の視線が無遠慮に、笑ったり膨れっ面をするお兄ちゃんの頬や背を撫でて、ゆるりと離れる。わたしは繋いだ手に力をこめる。祐樹お兄ちゃんがちいさくうめいて、わたしの顔を覗きみる。
「どうかした?」
「……ううん、なんでもない。祐樹お兄ちゃん、やさしいとかわいいは戦えないよ」
「うそ、出来るよ! 出来るもん!」
瞳お兄ちゃんがここにいなくてよかったな、と思った。
べつに、いてほしくないわけじゃない。いたら、そっちのほうがうれしい。あたりまえだ。
公園の樹はいつの間に葉を失って、寒々とした枝を北風に揺らしていた。いつも通り木製のベンチに腰かけ、いつも通り他愛のない話をした。わたしはその日国語のテストが返ってきたばかりで、話の流れで簡素に丸ばかりがほどこされた用紙をみせることになった。どことなくはずかしくて肩をすぼめるわたしに反して、祐樹お兄ちゃんは「すごい! 百点だよ!」とおおげさなほど喜んだ。
勉強の話はともかく、テストの点を誰かにみせてほめられたことは一度もなかった。それもあってわたしはずっとほっぺたがむずがゆく、もじもじと膝を寄せていた。祐樹お兄ちゃんは「すごいねえ、字もきれいだねえ」とにこにこ追撃を放ってくる。
思えば当然のことだけど、お兄ちゃんたちにとってわたしは最初から最後までちいさく、おさないだけのこどもだった。わたしは三人の妹ではないけれど、まるきりみしらぬ他人でもない。友人と呼ぶにはすこし年の差がある。高校生と小学生という違いは、彼らがわたしをいつくしみ撫でてくれる理由として十分すぎた。
それでもわたしは素直にうれしく、ほめられ慣れていないので照れてもいた。痣が点々とのたうつ肌に、うつくしい父とは似ても似つかぬ平凡な顔。ドッジボールもかけっこも苦手であるわたしは、こんなにまっすぐ称賛されると、どうしたらいいか困惑してしまうものだった。
北風が公園を吹き抜けて、くしゅん、とくしゃみが飛びだす。洟をすすって、ワンピースからでている青紫の膝をごしごしとカイロでこする。祐樹お兄ちゃんは心配そうな顔でわたしの頭を撫でながら、「大丈夫?」と問う。うなずいて、ランドセルからポケットティッシュを取りだす。
「ごめんね、俺が持ってなくて……」
「ううん、ぜんぜん」
洟をかんで顔をあげて。
ぞ、っと。
背筋があつくなった。
お湯をかけられたように。
公園の入り口に、ぼうっと立っている黒い人影がある。
祐樹お兄ちゃんはわたしがとつぜん一点をみつめて硬直したので、ふしぎそうに首をかたむけた。入り口のほうへ視線をやり、「誰……」と尻すぼみの声でたずねる。わたしは喉がいたいほど乾いて、なにも言えない。
空虚な憎しみと苛立ちを隠さない青ざめた顔は、わたしたちをみつけてはいなかった。どうせまた、なんとなしに近所をぶらついただけなのだろう。塗りつぶされたようにまっくろい瞳が、さびしくまばたきを繰り返す。いくら花を枯らしても、いっこうに朽ちない美貌。乾けば乾いただけのうつくしさを持っている。意思のない、生きているだけの亡霊のような風情。
百日紅の花が揺れるように、おぼつかない足どりで歩いてくる。
わたしの父。
一歩、一歩とこちらにくる。
……いやだ。
わたしは弾かれたようにベンチから飛びおりて、祐樹お兄ちゃんに説明もせず、ゆらゆらと歩くその男に走り寄る。「要さん」あまりださない大声で名前を呼ぶと、男は視界のピントをあわせるかのように、緩慢な動作でわたしをみた。暗く淀んだ目が、わたしには理解出来ない苦悩をあらわしてゆがむ。あぁ、機嫌がわるいのだなあと、ひどく冷静にそう思った。
要さんの手が振りあげられて、驚くほどのはやさとちからづよさでわたしのほっぺたをたたく。足元がふらついたところを、執拗に殴られて地面にころがる。いたくはないけど頭がぐらぐらするし、祐樹お兄ちゃんがすぐそこにいると思うと、はずかしくて情けなくて泣きたくなった。災害の時間をひとが選べないのと同じように、わたしは要さんの暴力を選べない。
わたしが地面にころがってすぐ、「葵ちゃん」とおおきな声がわたしを呼ぶ。顔だけ動かしてみると、紅色のランドセルを自分の鞄と並べてベンチに置いている祐樹お兄ちゃんが、怒りと困惑のいりまじった顔でこちらをみつめていた。要さんは他人に関心が薄いので、わたしを殴ることに手一杯といった様子だ。
でも、干渉されてまで無関心ではいられない。
祐樹お兄ちゃんは大股で駆け寄るようにわたしと要さんのもとまで来て、間にわって入ってくる。わたしはいやな予感がした。暴力をみられるよりもまだ、いやなことが起きる。
「……お兄、ちゃん」
「やめてください、なにしてるんですか」
「……誰だよ」
要さんは自分をわたしの上からどかそうとする祐樹お兄ちゃんの手首を掴んで、軽々と払いのける。ゆったりとしているのに避けようのない奇妙な速度で、祐樹お兄ちゃんの顔を殴る。わたしは声にならない悲鳴をあげた。口の中が切れていて、鉄の味がきもちわるい。
祐樹お兄ちゃんは要さんに抵抗するタイミングをうかがっているような、静かだけれど獰猛な視線を要さんに向けていた。祐樹お兄ちゃんの腹や肩にぼこぼこと振りおろされる手を、止めなくてはと立ちあがる。よろめくわたしの肩を、うしろから支えてくれるやさしい手があった。白い花の匂いがする。
クレマチスの匂いだ、とぱっと振り返ると、瞳お兄ちゃんはぽんぽんとわたしの頭についた砂を払ってから、要さんの手を掴んだ。ぎり、と音がしそうなほどのちからづよさで。
公園に乾いた風が吹く。
枯れ葉がいっせいに舞いあがる。公園に満ちた陰鬱な気配に、おびえ逃げるように。
百日紅の匂いがいっそう濃くなって、わたしはせきこんだ。むせ返るほどの花の匂い。花を枯らす、ひとの。
「どいつも、こいつも。鬱陶しい」要さんが暗い声で吐き捨てる。
「どいつもこいつも、殴ってるのはあんただろ」
「俺じゃない、……それが悪い」
ふるえて立ちつくすわたしを指さして、要さんはくしゃくしゃに顔をゆがめる。「父さんと同じ顔で、俺じゃない奴といるなんて。どうかしてる。どうかしてるんだ」卑屈に笑っているような、真っ黒い声。理解も共感もほど遠い。まるで出来ない。頭がぐらぐらする。
「そんなのは葵を殴る理由じゃない」
瞳お兄ちゃんはきっぱりと、落ちついた声で言いきった。わたしが横顔をみあげても、瞳お兄ちゃんは眼前の男をみすえている。要さんが不愉快そうに眉を寄せて、掴まれていないほうの手で瞳お兄ちゃんの顔を殴る。
――いやだ。
「……やだ!」
たまらずわたしは足をふみだし、要さんの痩せてかたいからだに体当たりした。瞳お兄ちゃんも祐樹お兄ちゃんも、要さんも、あっけにとられた顔でわたしをみていた。要さんの肩をちからいっぱい押して、地面にころがったそのからだにまたがる。わたしはさむさなのか怒りなのか、ゆだった感情に頭を白くして、唇をふるわせながら要さんの顔をたたいた。
ぱしん、とこころもとない音が響く。
自分の髪の先までが、怒りで赤く染まっている気がした。
「――どうしてそんなことするの! わたしじゃないのに殴るの! ばか、ほんとうにばか。お兄ちゃんたちはわたしじゃないでしょう。どうしてわからないの。どうしてそんなにばかなの。要さんはわたしだけ殴っていればいいの。わたしだけ、わたし、だけ、……」
しゃべりながら、どうしようもなくみじめなきもちがせりあがってきて、涙がでてくる。喉の奥でぐう、と空気が音をたてる。殴られるところをお兄ちゃんたちにみられたはずかしさと、要さんがお兄ちゃんを殴ったことへの屈辱感めいた怒りがまざりまざって、わたしはぐちゃぐちゃの泣き顔で要さんのほっぺたや肩をたたく。
要さんはしばらく茫然と、わけがわからないといった表情でわたしをみていた。なにを言ってもなにをされても、このひとはあしたになればぜんぶ忘れたようにあたりをさ迷って、わたしを迎えにきて、殴る。わたしが泣こうと、他人が介入しようと。それは絶望だけれど、安心でもあった。お兄ちゃんたちのこともきっと、あしたには霧が晴れるように忘れてしまう。
そうして元通りのあしたが来る。
きのうまでと同じように。
やがて、たたかれ飽きたとでも言うように要さんはのっそりと起きあがり、わたしの喉を掴む。息苦しさにぐっと顔をゆがめると、祐樹お兄ちゃんが「やめてください」と叫び、瞳お兄ちゃんと共にわたしと要さんの間に入ってくる。またお兄ちゃんが殴られる。まばたきすると涙がこぼれた。
風が吹く。
「何やってるんだよ?」
要さんがふたりに手を上げるよりはやく、きびしくはりつめた声が響いた。全員が声のほうをみると、灰色のブレザーを着込み、同じく灰色の髪をした少年が、落ちついているがどこかあきれたような、怒ったような真顔で立っている。
真っ白を強引に暗くした気難しい灰色は、みおぼえがある。
「……むつ、き」
「や。葵は帰り? ……あぁ、この時間だもんね」睦月は細い手首に巻いた腕時計をながめて、うなずく。
「とりあえず、要は手を離せよ。見つかったら家族だって言葉も言い訳にならない」
突き放すような淡々とした物言いに、祐樹お兄ちゃんがすこし眉をひそめる。要さんがしぶしぶとわたしの喉を解放したので、わたしはせきこみながらもあわてて「い、家のひと……」とふたりに説明する。
要さんや文月さんの話はうっすらとしたことがあるけど、そういえば睦月の話はしたことがない。ふたりからすれば突然妙につっかかってくる少年があらわれたような状況だ。睦月は要さんがだまってむすったれているのを確認すると、ふたりに対して「どうも」とうすく微笑んだ。
「突然失礼しました。葵の叔父です」
「おじさん?」祐樹お兄ちゃんがきょとん、と睦月の全身をながめる。小柄でほっそりした体躯の睦月は、顔立ちが中性的に整っているのもあって、どこか少女のようにもみえる。私立の中学らしいしゃれたデザインのブレザーを着た細身の少年は、まちがってもお兄ちゃんたちより年上にみえない。
「あ、僕は中学生。葵のみっつ上」
「そ、そうなんだ。ごめん、おじさんって聞くと不思議になっちゃって……」
「まぁ、それが普通だろうね。ところでお兄さんたちの素性を僕は知らないんだけど、要とどっこいの変質者だと疑っていいのかな」
「ちがう!」
お兄ちゃんたちより先に、わたしが声をあげた。睦月は鞄から取りだしてかけていた携帯をするりと鞄に戻して、「そっか?」と微笑む。わたしは要さんがぼんやり虚空をながめているのを確認してから、お兄ちゃんたちのことを知り合い、と説明した。へたなことを言ったら要さんがお兄ちゃんたちまでさがしてしまう。いまのことも忘れてくれるだろうけど、不安は不安だ。
「身内の喧嘩によその人を巻き込んだことは謝るよ。要には謝罪する思考自体がないから、僕が代わりに」
「……喧嘩じゃねえだろ」
わたしのはれぼったくなったほっぺをみて、瞳お兄ちゃんが苦々しくつぶやく。瞳お兄ちゃん自身の顔にも、祐樹お兄ちゃんにも、赤黒い殴打の痕が生まれてしまっていた。わたしは苦しくなってうつむく。心配しなくていい、と言うように瞳お兄ちゃんが背中を撫でてくれた。冬の寒々しい風が、はれたほっぺを刺すように吹く。
「確かにね。でも、僕にはこれを喧嘩以上にする力がないんだ。心配してくれてるのに悪いけれど」
帰ろうか、と睦月が問いかける。わたしはうなずいて、瞳お兄ちゃんと祐樹お兄ちゃんの顔をみあげる。
「……お兄ちゃん、」
「お前がそんな顔しなくていい」瞳お兄ちゃんがため息まじりにつぶやく。わたしはごめんなさい、をのみこんだ。
「また、会ってくれる?」
「もちろん」
すぐさま答えたのは祐樹お兄ちゃんだったけれど、瞳お兄ちゃんもだまって首肯していてくれた。わたしはベンチに置かれたままのランドセルをとりにいって、軽くワンピースの土をはらってから、それを背負った。睦月は鞄からだしたちいさな本を開きながら、要さんに「ほら、帰るよ」とうながしている。
風が強く、公園の木々を揺らす。怒り狂うようにあばれる枝たちにわたしはすこしおびえて、肩をちぢめながら睦月と要さんのうしろをついていく。ほんとうにめずらしく泣きじゃくってしまったせいで、殴られた箇所より目元がじんじんしていた。
先頭に要さんを歩かせている睦月が、わたしのほうへ顔を寄せてちいさく「お兄ちゃんって?」とたずねる。わたしはとことこと歩きながら、ランドセルのベルトをぎゅっと両手で握る。
「……お兄ちゃんたちは、すきな、ひと」
「……そう」
睦月はそれから家につくまで、なにも言わなかった。
わたしは公園にまだふたりがいるとわかっていて、振り返らない。要さんがおそろしいのではなく、なにか気恥ずかしいような、いたたまれないような気分だったから。
冬の風はさびしく、吹き荒れている。
ぶあついカーディガンだけを着たわたしは、刺すような風のつめたさにぶるっとふるえて、うつむきがちに歩き続けた。