永遠は透明

   小学五年生になっても、変わらずお兄ちゃんたちと会い続けた。  わたしはその春ごろから、背丈や顔の変化はないまま胸だけが盛んに成長しはじめ、同級生のおんなのこたちよりあきらかにふくらんだそれを非常にうっとう…

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白い花束の彼女

   この世には花として生かされる人間がいる。  僕が名字の違う姪と初めて顔を合わせそれを知ったのは、僕が小学四年生の春だった。別段なんの偶然でもないが、ちょうど今の葵と同じ年だ。それまでも六年間同じ家にいたら…

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冬空と空砲

   夏が暮れると、呼吸をくりかえしているだけでも秋は通りすぎて、あっという間に冬が訪れる。  学校はというと相変わらず何事もなく、わたしはぼんやりと毎日を過ごして勉強にはげんでいた。運動会にも学校祭にも誰も来…

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花の名

   秋が深まって、庭のコスモスと銀木犀がぽろぽろときれいな花を咲かせるころ。  学校にいこうと紅色のランドセルを背負って自分の部屋をでると、二階奥の書斎の扉が開く。「おはよう、葵……」のっそりと緩慢な動きで出…

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昼顔

   楓お兄ちゃんの写真は、いつも花束みたいだった。  携帯のカメラとかデジカメみたいなちいさいものじゃなくて、あちこちがごつごつしている兵士の武器みたいなカメラを構えて、楽しそうにお気に入りの景色やお兄ちゃん…

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   ほんとうに、まばたきをしていたら夏が暮れたようだった。  あしたから十月になる。  駅前の花屋に並びはじめた秋の花をながめていると、「おい」と声をかけられた。  耳慣れた声に振り向くと、参考書ぽい分厚くて…

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底に飴玉

   数日しないうちに、わたしはまた三人にみつけられた。 「葵ちゃん?」と声をかけてきたのは祐樹さんだった。のどから背中にしっぷを貼りたくっていたわたしは、その日もあてどなく動いていた足を止めて、三人の顔をみあ…

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晩夏と初恋

  「三人、いたよ」 わたしはよどみなく、指を三本たてて首をかたむけた。さわがしい昼休みの教室でわたしと談笑にふけっていた水屑くんが「へぇ?」とわかってなさそうな顔でうなずき、「三人って、同時に?」と質問を重ね…

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始発、あるいは回想

Nagaku Takashima – she is    僕らは墜落した。  きっかけはあると思いたいが、明確なものはないのかもしれない。僕らは最初から終わっていた。爆散する鮮烈な夏にも、いつまでも…

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白波

 寝過ごした日曜日、起動に時間がかかる体を引きずってリビングに降りると、妹がピアノを弾いていた。 「……父さんたちは」 「あ、おはよう兄さん。お父さんたちは買い物」 「へぇ、そう」  双子の妹はきっちり服を着替えて髪もま…

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